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若手公認会計士の進むべき道  (JICPAジャーナル)

会計ジャーナル 1985年(昭和60年)7月号  公認会計士は活動する 第19回
渡辺俊之  (40歳当時の原稿)
1,「数字後追い業」としての監査業務
2、「数字こねまわし業」としての税務業務
3, 「数字組立業」としてのMAS業務
4, はたして自由業なのか?
5, 10年後のCPAとしての私の望むべき姿
6, 協調の時代

くだけた会合等での自己紹介に、私は自分の職業を「数字こねまわし業です。」と言っていたことがある。聞いている人は皆「!!…ンン?…」という顔をするが、そのわけは後述する。

最近の我々の業界をみると、公認会計士試験の受験生の減少傾向に象徴される監査業務(公認会計士業務とは言わない)の魅力の低下、それとは裏腹に、高度な情報化社会に対応したMAS業務の華やかさ等々、将来に期待してよいのか、この業界は見捨てるべきなのか、我々仲間同士が迷うような時代になってきている。

そこで、私のようなAB型独得の皮肉っぽい見方で当業界を分析するとともに、これからの若手公認会計士の進むべき道を提言してみることとする。

1. 「数字後追い業」としての監査業務

昭和45年に会計士補としてこの業界の泥沼に足をつっこんでから15年経過するが、私が監査専業でやってきた期間は5~6年である。その間、会計士補時代は仕事を通じての実務経験を貪欲に、一刻でも早く身につけたいがために、深夜残業してまで会計業務等を吸収した。

しかし、3次試験に合格して客観的に監査業務をみつめてみると、どうもその仕事に創造性が無いことに気がついた。所詮、監査は会社の経理等が作成した資料や、帳簿、あるいは外部証拠のチェック(眺めさせていただいたといった方がよい場合もある)にすぎず、人がやった仕事の後追いにすぎないのではないかという思いが先に立った。こんなことから監査業務(特に証券取引法に基づく監査)は「数字後追い業」ではないかと思いこむようになってしまった。監査専業者にも上場指導のための監査を筆頭に指導性を発揮する場面は多々あり、それが実を結んだ時の喜びは大きいが、相手は何せ超大会社。能力的には相手もさるもの、我々以上に勉強する時間的組織的ゆとりがあって、我々の指導的助言も犬の遠吠え的感覚で受けとめられ、「勉強させてあげる」的寛容な態度で我々の忠告を聞いていただけるのである。こんなことを書いていると公認会計士になりたての希望に満ち満ちた若手(私もまだ若いです)は、ますます落ち込んでしまいそうであるが、この貴重な経験が、後々大変役に立つのである。我々は税務業務や、MAS業務を展開するに当たって、他業種の職業会計人や、他の専業コンサルティング会社とは一味違った総合的指導のできる可能性を秘めた能力集団であることは間違いないと思いたい。私自身にはその能力のほんの一部分も具備しているとはとても言い難いが、その努力は続けたい。

2. 「数字こねまわし業」としての税務業務

「こねまわす」という言葉は意識的に皮肉っぽく言っているので誤解を招きやすい故、若干の補足説明を要する。

税務業務の主流は記帳業務をベースとしており、多くの町の会計事務所がこれによって生計を維持していることは想像に固くない。記帳業務といっても、伝票の作成までは会社でやってくれるので、試算表と総勘定元帳の作成をコンピュータで処理しているという事務所が大半だと思われる(創業期の事務所では、証憑の整理から伝票の作成までの業務もそれなりの報酬を得て行っているようである)。

このような記帳業務を主体とした税務業務に当たっては、データのインプット作業、残高照合作業等・数字をこねまわし、調整する作業が多くなる。また決算に当たっては、与えられた会計処理の制限下で、数字の調整、すなわち決算整理仕訳を行う。さらに相続対策、株式の評価、移動を中心とする事業承継対策、不動産売却対策等のタックス・プランニングで、数字のシミュレーションをしたりする。このような一連の作業を総して「数字こねまわし業」と、私は呼んでいる。したがって決算操作とか、利益調整という意味合いで「こねまわし業」と言っているのではないので、誤解をしないで頂きたい。

「数字こねまわし業」である税務兼業時代に入って、すでに10年を経過するが、「数字後追い業」時代には、経験できなかった実に多様な人種と接することのできる喜び、指導性を十分に発揮できた時の昂奮、建設的意見の具申が、崩壊的意見に変化してしまうのではないかとの不安からくるスリル等々、実に多種多様でバラエティーに富んだ毎日が過ごせる。

この点「数字後追い業」時代では、監査チームの編成替えが、めったにあるわけでなく、したがって同じメンバーで同じ担当先のクライアントを同じサイクルで巡回するという型にはまった生活形態が出現する。監査業務を経験した事のない人には理解してもらえないと思うが、このような極めて規則的、定型的業務形態の中で仕事をしていると、出張先の常宿のホテルまたは旅館等の日々の食事のメニューも定型化されていることに気づき、明日の夕食に何が出て来るかも予測できるようになる。すばらしいことである。また料理人がかわらないせいか、いつも同じ味の味噌汁、油をかえることはしないのではないかと思われる、いつも決まりきって出される天丼等々が、10年たった今でも、あの味が舌にこびりついている。

3. 「数字組立業」としてのMAS業務

「組立てる」という言葉には、建設的、創造的、指導的といったニュアンスが含まれる。そこで私は、MASといわれる経営改善助成業務を狭義の意味で、「数字組立業」と言っている。

しかし、MASは、決して数字にこだわってはいない。人生の究極的目標は「人問の幸せ」を追求することになろう。その追求過程で、MAS業務が存在すると思われる。職業会計人にとってのMAS業務の必要性は、急務であるが、対象が広域にわたりすぎるが故に、マニュアル化された手法が会計人自身で充分に見出されていないのが現状である。

私の個人的感覚からすれば、MAS業務は、あえて言葉を悪くすると「社長そそのかし業」であり、「社長洗脳業」であり、「社長叱正業」である。したがってMAS業務はそこからスタートすべきであると考える。私自身、そのような資質に欠けるが故、MAS業務に興味を示しつつも、なかなか、そちらの方に顔が向かないというのが現状である。しかし最近の我々職業会計人のMAS業務を背後から強力に支援してくれる真の意味でプロのコンサルタンティングファームが陸続として出現しつつある。彼らが提供するMASのためのツールは大変すばらしい。誰にでもMASができるという「バカチョンMAS」の時代が、目の前に見えている。何だかよくわからないが、我々職業会計人の世界は、今まさに、明治維新前夜のような、不安と、混迷と、期待感が混然一体になった「身震い」を予感できる時代に突入したようだ。

4. はたして自由業なのか?

「士」業というのは、自由業であるということで、ある種の魅力を感じてこの業界市二入って来た人も多い筈である。しかし、サラリーマン化の進展が著しい当業界は、すでに自由業というには、あまりにもかけはなれてしまっているし、独立した個人の公認会計士もあまりに忙しすぎて時間がない故、むしろ不自由業といった方が、相応しい。しかしサラリーマンと武力独立した公認会計士の違いは、スケジュールを自らの意志で調整できる点にある。「忙中閑」はないが「忙中閑を作る」ことは可能である。この点で、独立した公認会計士は自由業であるといえる。

監査法人の将来、強いては当業界の将来を考えた場合には、法人に勤務する公認会計士は、銀座等のクラブのホステスと同じようなシステムにすべきであると、本気で真面目に考える。売切り契約制のクラブのホステスは、一定の売上の計上をすることを保証し、その売上に見合う契約金をもらうことによってクラブという器を借り、顧客獲得から、その後のフォロー、回収業務までの全責任を負って働いている。店を移るときは、移動後の店が、移動前の店の売掛残の精算までしてくれる(バンスという)。

監査法人も、立派な物的施設(福利厚生施設も含む)と教育システム、審査機構のみを保有し、各公認会計士とは自由契約制度によって仕事を進めていくシステムはどんなものであろうか。

5. 10年後のCPAとしての私の望むべき姿

 夢の話ではあるが、1ヵ月の労働時間は200時間以内にしたい。勿論、完全週休2日制に移行する。
土曜日は毎週ゴルフ、日曜日は月2回の家族サービス、平日の夕方は週2回趣味の会でダベリング、年に一度10日程の海外旅行、正月休みは勿論常連の家族と一緒にスキー行き、そしてアフタースキーはカラオケで気晴らし。
 「もしかしてパートII」、「3年目の浮気」のような思わせぶりな曲や「我が良き女よ」のような古き時代の歌が何ともいえない。

 いやあまり悪い夢をみない方がよい。月400時間労働、子供達と顔を合わせるのは週2~3回という現実をどう考えるのか。 しかし時間は金を出せば買える筈。 何とかなるでしょう。

6. 協調の時代

私共は、昨年初め、全国的規模の共同事務所を設立し、既存の監査法人等にはない「何か」を求めて、月一回の研修会兼例会を全国各地で開催しており、その活動の影響は各メンバーに計り知れない効果をもたらしている。現在は40人以上の規模にふくらんで来ており、平均年齢38,06歳という若き集団(35歳以下25%、36歳~40歳39%、41歳~45歳25%、46歳以上11%)ゆえに、その発想のユニーク性は、他に類をみないと思われる。全国的(現在13カ所)同志的結合は、心熱き燃える集団に変貌することに間違いない。

我々は知識と時間を売って生活しているが、断片的知識の非論理的集積では、何の役にも立たない。我々が監査専業時代から税務兼業時代へ移行する過程で、このことをそれぞれ感じている筈である。しかし、実務経験や執筆活動、講演活動を通じて、それを継続的、体系的知識の論理的集積に、見事に転換している我々の共同事務所の仲間を沢山見るにつけ、この組織の将来性に、ますます注目したい。

上場基準の緩和、MAS業務の急展開等我々をとりまく環境は激動している。監査法人同志の熾烈な戦いを、岡目八目的に観察していると、勢力の無駄づかいを感じる。これからは、監査法人同志の協調、監査法人と個人事務所の協調、共同事務所と監査法人の協調の時代であろう。我々仲間の基本的認識もその点で一致しているし、「心無き燃える業団」を持続できるのであれば、他と手をたずさえて進んで行くこともやぶさかではない。そして若い仲間の輪をさらに拡げていきたいとも考えている。

未見の我を求めて、また未見の組織を求めて、たゆまなき前進!


会計ジャーナル 1985年(昭和60年)7月号
公認会計士は活動する 第19回
渡辺俊之  (40歳当時の原稿)

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「 10年後のCPAとしての私の望むべき姿 」 の後日談

24年後の実態  平成20年11月現在

○ 1ヵ月の労働時間は200時間以内にしたい。  → 労働の質は様変わりしたものの、分刻みスケジ                     ュールはさらにひどくなったかも
    仕事も 税務、公認会計士監査、上場会社社外監査役、地方公共団体の包括外部監査人と、い         ろいろやらされてます。

○ 勿論、完全週休2日制に移行。 → これは実現。 ただし職住近接なので、土日の仕事は当たり前

○ 土曜日は毎週ゴルフ、日曜日は月2回の家族サービス、  →  せいぜい月一ゴルフだったものの
                          土曜日は稽古日になってしまい、運動不足

○ 平日の夕方は週2回趣味の会でダベリング、  →  夜の会合の後の飲み会のダベリングが楽しい
      
○ 年に一度10日程の海外旅行、  → 海外は仕事がらみも含めて年に、2、3回は出かけてますね
 
○ 正月休みは勿論常連の家族と一緒にスキー行き、 → スキーだけは、40年続いてましたね、 去                                 年いけなかったのが残念

○ そしてアフタースキーはカラオケで気晴らし。   →  カラオケは、年がら年中やってます。

    「もしかしてパートII」、「3年目の浮気」のような思わせぶりな曲や
    「我が良き女よ」のような古き時代の歌が何ともいえない。

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     沖縄曲のレパートリもかなり増えました。 最近は端唄、小唄に凝ってます。

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