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子会社・関連会社の債務の肩代わり(税理2000年7月号)

ポイント
子会社等の債務を肩代わりした場合の税務上のポイントは以下のように整理される。
1・一般的には寄付金として認定される。
2・子会社支援損として損金に算入するためには下記の項目を総合的に検討することになる。
①・子会社等に該当するか
②・子会社等は倒産の危機に陥っているか 
③・親会社が損失負担等を行うことに相当の理由はあるか
④・支援額は合理的であるか
⑤・整理・再建管理はなされているか
⑥・支援者の範囲は相当であるか 
⑦・負担額の割合は合理的であるか 

   ↑ 以上 ポイント
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   ↓ 以下 本  文

特集記事 子会社・関連会社支援の税務
子会社・関連会社の債務の肩代わり       税理2000年7月号
公認会計士・税理士 渡辺俊之
ポイント
子会社等の債務を肩代わりした場合の税務上のポイントは以下のように整理される。
1・一般的には寄付金として認定される。
2・子会社支援損として損金に算入するためには下記の項目を総合的に検討することになる。
①・子会社等に該当するか
②・子会社等は倒産の危機に陥っているか 
③・親会社が損失負担等を行うことに相当の理由はあるか
④・支援額は合理的であるか
⑤・整理・再建管理はなされているか
⑥・支援者の範囲は相当であるか 
⑦・負担額の割合は合理的であるか 
なお、本稿作成途中で国税庁発表の「子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係わる質疑応答事例等」の全文が掲載されることになり、テーマが重複することとなったため、このポイントの解説は後添資料に委ねることとした。  
従って、本稿は子会社・関連会社の債務の肩代わりに関する寄付金認定の従来からの考えかたの推移と、債務の肩代わりの諸形態についての検討を加えることとする。

■ はじめに
再建型倒産処理手続きを定める基本法として4月に和議法に変わり民事再生法が施行された。又2000年3月期決算からは連結会計が重視されることで大手企業がバブル期に設立した子会社を整理する動きが相次いでおり、バブル崩壊後の処理はその速度を一段と早めようとしている。こうした子会社等を整理する場合や再建する場合など、税務当局と納税者との間で寄付金か損金かでしばしばトラブルが発生している。
 本稿は子会社・関連会社の債務の肩代わりに関する寄付金認定の従来からの考え方の推移と、債務の肩代わりの諸形態についての検討を加えることとする。
 なお、子会社等の債務の肩代わりを行う場合の税務取扱は、99頁(参考資料)「子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例等」を参照していただきたい。

Ⅰ・子会社等の債務を肩代わりした場合の法人税法上の取扱いについて
(1)一般的取扱い
法人が子会社等の債務を肩代わりしたような場合には、一般的に次のような仕訳がなされる。
(親会社仕訳) 寄付金 ××× / 借入金××× 
(子会社仕訳) 借入金 ××× / 債務免除益×××    
営利法人は、個人のような消費生活を営まず、利益の追求を目的として活動している。債務の肩代わりのような無償の行為であっても、営利法人が支出するものは、事業活動に関連したものと当然考える必要がある。債務の肩代わりのような無償の行為が、事業活動として行われたものとして、費用性を認めるのが相当な場合もあるが、事業活動として行われたものか否かを判定することは容易でない。

(2)寄付金の損金不算入規定
そこで法人税法は、22条(各事業年度の所得の金額の計算)とは別に37条(寄付金の損金不算入)を設け、行政的な便宜及び課税公平の維持の観点から、一種の擬制として、統一的な損金算入限度額を設け、その範囲内の金額は当然に費用性があるものとして損金算入を認め、それを超える部分については、仮に何らかの事業関連性があるとしても、損金算入を認めないものとしている。子会社等に対する債務の肩代わりも、基本的にこの考え方によって判断される。
 又法人税法第37条第6項本文は寄付金の額について、「寄付金、拠出金、見舞金その他いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的な利益の贈与又は無償の提供をした場合における当該金銭の額若しくは金銭以外の資産のその贈与の時における価額又は当該経済的な利益のその供与の時における価額によるものとする。」
と規定している。
 したがって、法人が子会社等の他人の債務を肩代わりし、その無償の供与に事業関連性がない場合には寄付金の額に該当することになり、資本金と資本積立金の合計の0.25%と当期の所得金額の2.5%との合計額の1/2を超える部分が損金不算入となるのである。
 従来、法人税の執行上、伝統的な民商法重視の立場に立って、商法上の株主有限責任の原則をそのまま援用して親子会社間における課税関係を処理するという考え方が支配的であった。しかし、業績不振の子会社を何とか再建したいと考えて支援する場合や、債務を肩代わりして業績が悪化した子会社をやむを得ず解散する場合は、このような原則的な処理でよいのかという疑問が生じる。
解散等を決断する親会社の社長や経営陣は、従業員やその家族、親会社としての責任を考えると、解散を苦渋の想いで決断するはずである。

(3)昭和55年5月・法人税改正
昭和55年5月の法人税改正により寄付金の範囲等に新たに法人税基本通達9-4-1・9-4-2(特集記事後添資料・国税庁「子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例等」(6)問2-3法人税基本通達9-4-1及び基本通達9-4-2の原文掲載参照)の取扱い
が示されたのであるが、昭和55年法人税改正以前の、株主有限責任論にもとづく税務当局側の論理展開をみてみたい。
人的構成及び資本の上で密接な関係にある子会社等を業績不振により解散させる場合において、親会社等が債務を肩代わりすることについて事実上拒否しがたく、事業遂行上有益であると認められる場合において寄付金と認定された事例を紹介する。
納税者は、商法23条(氏名・商号を貸した者の連帯責任)に基づく連帯債務者としての法律上の支払義務があり、道義的責任ないし信用保持の見地からこの債務の肩代わりは有用であると主張した。
一方、税務当局は伝統的な株主有限責任論にもとづき、納税者の債務負担行為は、それが契約に基づくものであっても、また道義的責任を果たすものであったとしても、結局は合理的経営を行っている法人として負う必要のない負担を敢えてしたものであり、なんら代償も要求しないのであるから、このような負担行為に基づいて支出された弁済金は、寄付金に該当すると主張した。
最近の考え方からすると強引な主張ともいえる。結果は、債務を肩代わりすることは事実上拒否しがたく、事業遂行上有益であったことは看取できるが、債務負担行為が無償で事実上求償し得ないのに敢えて任意に行ったものであるから、寄付金であると認定した。(昭和39年4月京都地裁判決)
 今日であれば「事実上拒否しがたく、事業遂行上有益」であれば子会社支援損として損金に算入することは問題ないと考えられる。
このような納税者と税務当局とのトラブルをへて法人税法基本通達9-4-1及び9-4-2の取扱いが明らかになった。
昭和55年法人税改正時「寄付金全体についてのトラブルが直ちに解消するとは思わないが、何でも寄付金にするという行き過ぎた執行をなくす趣旨である」旨、解説している税務当局者もいた。

(4)平成10年6月・法人税基本通達改正 
昭和55年当時の通達制定時には、子会社等の範囲(特集記事後添資料・国税庁「子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例等」(8)問3-1)が明らかにされていないため、いわゆる兄弟会社等の関連会社や、代表取締役を同じくする人的関係を有する会社が子会社等に含まれるのかといった問題があった。
更に、法人税基本通達9-4-1が子会社等を整理(・・)する場合の損失負担であり、法人税基本通達9-4-2は、子会社等を再建(・・)する場合の支援方法が無利息・低利融資である場合のみが示され、債権放棄等が含まれるのかといった問題もあった。
そこで、子会社等の範囲が明示され、子会社等を再建する場合に債権放棄等が含まれることが明確になった。もともと昭和55年の通達制定当時は子会社等を再建する場合にはまず人的支援をしたり、低利の資金援助をするであろうといった考え方があったことがうかがえる。

(5)平成12年・子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例発表
バブル崩壊後の損失負担や債権放棄の事例が急増しているため、再建支援等をする場合の損失負担等の税務上の取扱いについて事前相談も増加しているようである。
最近になって国税庁が子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例を発表した。平成10年の改正でかなりわかりやすくなったが、それでも法人税基本通達9-4-1が子.会社等を整理(・・)する場合の損失負担で、法人税基本通達9-4-2は、子会社等を再建(・・)する場合の損失負担であるため、通達を読んでいると整理する場合と再建する場合で何か税務上取扱いが違うのでは無いかといった疑念があった。
子会社等を整理することによる影響が少なく、整理コストも少額であれば子会社等の整理を選ぶであろうし、親会社等の経営や社会的影響を考慮すると支援再建した方が得策であれば再建を選ぶことになる。またいわゆる潰すに潰せないといった子会社もある。
子会社等を整理又は再建する場合の損失負担等が経済合理性を有しているかは
①・子会社等に該当するか 
②・子会社等は倒産の危機に陥っているか 
③・親会社が損失負担等を行うことに相当の理由はあるか
④・支援額は合理的であるか 
⑤・整理・再建管理はなされているか 
⑥・支援者の範囲は相当であるか 
⑦・負担額の割合は合理的であるか
を総合的に検討することになる。詳しくは、本特集後添の<参考資料>「子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係わる質疑応答事例等」(99頁)を参照されたい。
なお支援の方法としては、無利息貸付、低利融資、債権放棄、経費負担、資金贈与、債務引受などがあり、再建又は整理の実体に応じた方法を採用することとなる。 

Ⅱ・債務の肩代わり事例 
特集記事後添資料・国税庁「子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例等」とは違った事例についていくつか紹介してみたい。

 債務の肩代わりとはかなり広い概念でまた考え方もさまざまであろうが、債務をその同一性を失わずに引受人に移転する契約すなわち債務の引受けや、代位弁済、経費などの未払い債務の負担(一種の資金贈与)も債務の肩代わりと考えることができ、本稿の場合法人税基本通達9-4-1に言う債務の引受けその他の損失負担とほぼ同意と考えていただきたい。

(1)・営業活動をすることなく解散する子会社に対する債務の肩代わり
 たとえば、子会社を設立し、産業廃棄物処理工場を建設する計画をし、工場の建設許可を申請したところ、地元住民から反対運動が強力に展開され、市当局としてもやむをえないとして不許可の決定をせざるをえなくなった。このため産業廃棄物処理工場の建設を断念し、営業活動をすることなく解散した。解散に伴い親会社は子会社の債務の肩代わりをしたのであるが、このような場合子会社支援損として損金に算入できるかどうかであるが、解散原因については特に問われていないため「会社設立後営業活動をしていない」という理由で否認されることはない考える。

(2)・第2子会社方式による子会社整理の債務の肩代わり
親会社は、業績不振により再建が非常に困難な状況にある100%出資の子会社(第1子会社)を解散し、同一地域(本店所在地の住所が同一)に商号も全く同じ親会社100%出資の子会社(第2子会社)を設立し事業を引き継がせる整理計画を作成した。そしてこの整理計画において親会社が子会社の債務の肩代わりをすることにした場合に、その債務の肩代わりによる損失を子会社支援損として損金算入できるかどうかを検討する。
形式的には法人格の異なる第2子会社に営業を譲渡するわけであるから、法人税基本通達9-4-1(子会社等を整理する場合の損失負担)の適用が受けられそうに思えるが、第1、第2子会社はともに、親会社100%出資の子会社で本店・商号・事業内容まで全く同じである。
このような場合には第2子会社に営業譲渡をしても今までどおり親会社が経営権を支配し続けていることになり、第1子会社の解散は形式的なものに過ぎないという見方ができる。このためよほど合理的な理由がない限り実質的に営業権を譲渡したとはいえず寄付金と認定されるであろう。

(3)・債務の肩代わりをした時点で損失処理せず貸付金として経理した場合
親会社が債務の肩代わりをした時点では損失処理せず、
(親会社の仕訳) 貸付金(子会社)××× / 借入金×××(A銀行)  
(子会社の仕訳) 借入金(B銀行)××× / 借入金×××(親会社)       
と経理をした場合、貸付金として資産に計上している限り、通常の利率で利息計上する必要はあるが税務上特に問題が発生することはない。しかし債務の肩代わりをした時点で回収できないことが明らかであり、合理的計画もないままあえて肩代わりをしたものであれば子会社支援損として損金算入した時点で税務上の問題が発生し「回収不能になろうことが推認できたのに貸し付けた」として寄付金として認定される可能性もあろう。

(4)・資本金(増資)に振替え後解散した場合の株式消去損
子会社は業況が思わしくなく、債務超過の状態が長期間続いておりこれ以上会社の営業を続けていても損失が拡大するばかりなので解散させることにした。解散に際しては、売掛債権等の回収に長期間かかると予想されたので、資産・負債を第三者に譲渡してから解散の手続きに入ることを考えた。買い手からは、子会社に対する債務の肩代わりによる貸付金のうち、債務超過の額と同額を増資により資本金に振替、資産・負債同額になったところで、無償にて譲渡することを要求された。
上記の取引を仕訳で示すと
(親会社の仕訳) 有価証券 ××× / 貸付金 ××× 
(子会社の仕訳) 借入金  ××× / 資本金 ××× となる
買い手の条件を受け入れ、債務の肩代わりをしたのち、資本金に振替えた分を株式消去損として損金に算入することにした。このように増資後直ちに解散させることを予定している場合であっても資本金に振替えた分を株式消去損として損金に算入することが認められるだろうか。第3者からの要請とか合理的な理由があれば上記のような行為も実質的には親会社が債務の肩代わりによる損失部分の負担をしたことと同様になるため損金算入は認められるであろう。

おわりに
今現在、税務当局が伝統的な株主有限責任論に基づいてなんでも寄付金として認定することは、実務上考えられないが、支援する親会社にとって子会社支援損として損金算入できるか、寄付金として課税されるかは再建計画・整理計画の作成そのものにも大きな影響を及ぼそう。特集記事後添資料・国税庁「子会社等を整理・再建する場合の損失負担等に係る質疑応答事例等」はよくまとまっているので参考にすることができる。
最近の新聞報道によると、大手銀行16行の2000年3月期の不良債権処理が4兆6000億円、累計で50兆円とある。不良企業向け貸出金の引当を終えている銀行が増えているということで、今後は不良債権がバランスシートから落ちる最終処理が進むと考えられる。税務面からも無税処理が促進されて、バブル経済の実質的終焉を一刻も早く迎え、日本経済が実質的に回復基調に向かうことを念ずるものである。
 また、連結納税制度の導入が、確実視されているが、これは株主有限責任論とは相反する親子会社経済的一体論からの導入を目指すものであり、子会社関連会社間の税務的取扱いも変革することが予想され今後の動向に目が離せない。

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