会長の部屋

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理事会ニュース便り(常務理事報告)

公認会計士・真友会  平成10年7月31日 真友32号                 

常務理事 渡辺俊之


理事会ニュース便り (常務理事報告)

「監査を徹底し、会社のすべてをチェックするには『スキルとモラル』が必要だ。ところが日本公認会計士協会は努力を怠り、業界利益を拡大することばかりに力を入れてきた。その伝統が企業になめられる土壌を作ったのだろう」(日経産業新聞6月17日、奥島教授に聞く、日本の会計士監査のあり方と問題点)

「……現段階では赤字決算を伴う不良資産の一括処理に踏み切る考えはなく、黒字決算の範囲内で不良債権を継続的に処理……」(週刊東洋経済6月27日特集金融再編地獄)

「『当面、監査の世界に規制緩和なんてあるはずがない』というのが大方の見方、しかし、資金調達のグローバル化が進む中、投資家と企業の選択眼は厳しさを増している。その中でどれだけの日本の監査法人が生き残れるのか。実力を見つめ直す時期に来たようだ。」(日経産業6月17日 会社にNOといえる? 危機感募る監査法人)

以上はいずれも最近のマスコミに載った記事である。このような記事に対してそれぞれの公認会計士個人個人はどのような感想を持っているのだろうか?
新執行部による協会運営がいよいよ始まろうとしているが、高橋会長時代の3年間は実にいろいろなことが起こった。そしてそれに対処すべく実に精力的に仕事をこなしてきた。

奥島教授にいわれるまでもなく、スキルとモラルアップの為に「監査の品質管理」(監査基準委員会報告12号)、「会計上の見積りの監査」(同13号)、「専門家の業務の利用」(同14号)、「内部監査の整備及び実施状況の把握とその利用」(同15号)と公表してきた。

そして継続的専門研修制度の新規導入や、我々にとっては画期的と思われる公開会社の「品質管理レビュー制度」(カナダ方式に似た方法で、当協会が監査事務所を定期循環的にレビューする。その費用負担は業務会費に10%上乗せの案(当原稿作成段階))も実施段階を迎えようとしている。

このような内部努力をしているにもかかわらず、世間一般の当業界に対する見方は、上記記事にみられる以上に非常に厳しい。
協会執行部に近づけば近づくほど、独特のムラ社会ができあがり、業界利益の拡大と、守りの姿勢に何の違和感も持たなくなる傾向が芽生えてしまう。

規制緩和の論点公開で行政書士を襲った「書類作成独占廃止」の波は士業の間に強いインパクトを与えた。資格制度、業務独占等の見直しを迫られている我が公認会計士協会も、護送船団方式のぬるま湯の中で育てられてきた。

今後の協会運営も、グローバルな視点、投資家の視点、周辺関連業界をも包含した、極めて巨視的な観点の必要性と、当業界の発展というエゴの世界の綱引きという難しい舵取りが必要になりそうだ。