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小泉純一郎元首相講演録(その2)

 まず明治維新を成し遂げるために戊辰戦争、内戦をしているんですよ。日本人同士が戦っている、幕府を倒した時、江戸は無血開城ですけど、その為に数万の、多くの人が亡くなっている。
 ようやく明治維新がなった、わずか十年後、その明治維新を築き上げた、大久保利通と西郷隆盛がお互い戦わなければならなくなった。二人の盟友、これが10年たって、相対立してお互いに生きるか死ぬかの戦争をせざるを得なくなった。西郷隆盛は結局自刃に追い込まれた。その一年後大久保利通は暗殺される。

 明治になるときの戦争で殺し合い、10年後にまた西南戦争。 そうすると明治27年今度は大国清国との戦争ですよ。
 その10年後ロシアとのとの戦争ですよ、考えてみれば明治40数年、戦争の連続ですよ。
 我々歴史から見て明治はよかったとか明治は立派だったといいますけどね、あの明治の時代に生活していた人はどれほど苦労していたかということを忘れてはいけないと思うんであります。
 そしてその後の昭和になってからの、昭和恐慌、1929年、100年たってないですよまだ、あの昭和恐慌から戦争にいたるまでの苦労。これは今の状況どころではないですよ。多くの若人が亡くなっていった。私があのころ生まれて、学生だったら招集されて、おそらく死んでいるでしょうね。その時代に生まれなかったから運がよかったんです。
 そして、ようやくこの周辺の諸国、中国も朝鮮もロシアもアメリカも戦争を経験しているにも関わらず戦後60年、日本は戦争に巻き込まれづに平和の下に、成長をなすことができた。
 これに感謝しなければいけない。これからも戦争の無い日本、戦争を起こさないような対応、これがあらゆる政策を発展させるための一番大事な政治の要点だと私は思っています。

 そういう中で、(長い間)変わらない大事なもの、それは明治の時代にもっとも読まれたもの、ベストセラー、二つあるんですよ。ひとつはイギリスのスマイルズという人が書いたSelf help 自助文です。いかなる時代にあろうと、どう状況にあろうと、自ら助ける精神を持った人たち、この自助の精神がもっと大事だということを訴えている。様々な具体論をあげて、自ら努力している人たちにフレーフレーという応援を、具体的な事例をもとに書いているんです。自らを助ける精神と自らを律する精神、Self Contorol、SelfDisk? この二つほど大事なものは無いと、こういっているんであります。

 もうひとつは慶応義塾大学の創始者、福沢諭吉、学問の薦め、「天は人の上に人を作らず、人の下に人を作らず」
 じゃなくて、もう一つ大事なことを言ってんですよ。「一身の独立あって、一国の独立がある」、一身、個人、個人個人一人の独立があってこそ、一国の独立がある。一身の独立無くして一国の独立がないといってんですよ。あの厳しい時代に。

 時代は過ぎて、1960年にケネディ大統領は40代でアメリカの大統領に就任した。あの就任演説、皆な感動しましたね。
 あの就任演説どこ感動したんでしょう。一番感動したさわりの部分。「アースナ ファット ユー キャントゥ フォ ユア カントリー」? 時の大統領、40代出始めて大統領になって就任演説で、アメリカ市民に向かって、「諸君は、国家が諸君に何をしてくれるかを問い給うな、諸君が国家のために何をなしうるか問い給え」と言っている。政治家を褒めたことない日本のマスコミまで褒めたんですから。今そんなこと言ったら、日本、何言ってんだと、政治家笑われちゃう時代でしょ。

 国家のために、と言うと、ちょっとピントこないと思うかもしれないけれど、これはもうどの国でも私同じだと思うんですよ。国家、ユアカントリーの外にユアファミリーとか、ユアフレンズとか、皆さんが属している会社とか組織に置き換えてみればわかると思いますよ。 会社のために働いている人、社員のために働いている社長、こういう人は誰かが見てますよ。信頼してますよ。
 親は自分のことために何もしてくれるわけじゃなかったとしても、二十歳過ぎたら、両親のために家族のために何を自分ができるかとい人は社会がほっとかないですよ。

 去年、オバマ大統領が始めて大統領に就任した。オバマ大統領の就任演説のさわりは何ですか?
 オバマ大統領曰く「今は責任の時代だ、今最も我々に必要なのは、自分自身に対する責任だ」と、自分の国に対する責任だと、国際社会における責任だと、責任を説いてるんです。同じでしょ、明治の時代も、50年前も、今も。困難な時代ほど自ら助ける精神が多くなかったら、自ら一人ではどうしてもやっていけないような人たちを助けることできますか?
 自ら助ける精神、自らを律する精神、自らやろうという気運がなければ日本の経済発展しないですよ。どこの国でもそうです。
 そういう人が多ければ多いほど一人ではどうしてもできない助け合いができるように皆がなると思うんですね。
 この精神という厳しい時代であればなお、忘れてはならない、世の中どんなになっても忘れてはならない。

 セルフ、セルフ、セルフ。自助と自立 これが本人にとっても企業にとっても、国においても一番大事な精神だと思っています。
 今、政治家はなかなか信頼されませんが、私がすごい政治家だなと思っている人が一人います。
 尾崎行雄です。この方は明治23年はじめて衆議院選挙が行われた23年に33歳で立候補して当選した。以後、明治大正昭和戦後にかけて、なんと大選挙区、中選挙区、小選挙区制生き残って連続当選25回、議員勤続60年、記録は破られるためにあるといいますけれどこれはちょっと敗れないでしょう。私なんか当選12回で疲れちゃった。議員勤続37年ですけどね、これからあとね13回選挙、30年議員やれったってこの気力さえないですよ、体力は勿論。
 この明治の23年、33歳で立候補当選してから60年間その尾崎行雄が亡くなる年に、揮毫を所望されて書いた揮毫が、今国会議事堂の隣の憲政記念館に石碑で刻まれています。「人生の本舞台は常に将来にあり」、94歳。
 若い人じゃないんですよ。若い人言うんならわかりますよ。「人生の本舞台は常に将来にあり」、しかし尾崎行雄、94歳、あの枯れた味のある字でね、正面玄関に陳列されてます。「人生の本舞台は常に将来にあり」94才、野崎行雄。「あとは野となれ山となれ」という気持は無かったんですね。もう明日死ぬかもしれない、死ぬと思っていながら常に将来のために備えなければいかん。
 そういうことを書いて死んでいったんですね。金さん銀さんが百歳でいろいろコマーシャル出てましたよ。そういう精神あの時代あったのかも知れません。このコマーシャルの出演料どうしますか? 老後に備えて貯金します。と金さん銀さん言ってました。(一同笑)

 まあ、ともかくこの厳しい時代であればあるほど、今だけがすべてじゃない、94歳の人でも明日のために何ができるのかを考えて死んでいった。これは我々考えなければいけないですね。今日は、かけ離れた、お話になってしまいたがちょうど時間が過ぎてしまいました。こういう厳しい時代こそね、チャレンジ精神をもって、日本の元気をとり戻す。
 皆さんどうか、厳しいときでも元気を出して明日に備えて、明日のためにも今日のためにも大いにがんばっていただきたいと思います。ご静聴ありがとうございました。


 以上   22年1月18日 新高輪ホテル
 私ども税理士法人優和の税務関与先の子会社が主催する7周年記念パーティにて