会長の部屋

CHAIRMAN'S ROOM

職歴50年を振り返って~会計制度の激変に戸惑う~

職歴50年を振り返って  2025年8月21日

公認会計士協会東京会の総会時(令和7年6月30日)に職歴50年の公認会計士が丁度50人おり、その表彰式において代表して挨拶をする機会があった。大変光栄なことではありました。

その挨拶時には触れなかったものの、会計業界50年を振り返って何が大変だったか、面白かったか?の視点で記録に留めておくために筆を執ることとする。

1996年(平成8年)ごろを思い起こしてみる。護送船団方式のもとでは起こりえなかった銀行、証券会社、保険会社の倒産という事態が現実に起こってしまった。山一証券、日本長期信用銀行、北海道拓殖銀行等々いまだに記憶に新しい気さえする。

そんな中、橋本龍太郎政権下での日本版金融ビックバンが始まった。そして金融ビックバンにとって欠かせないのが会計制度の国際的な基準に合わせる必要性が叫ばれていた。

つまり金融機関保護の裁量型行政、言葉を変えれば護送船団方式からの脱却は、会計ビックバンと連動しており、取得原価主義が頭にこびり付く中での、時価主義会計。

自分が習ってきた会計の根底を覆す考えに頭がついていかない中、税効果会計、金融商品会計、減損会計、退職給付会計、資産除去債務会計と毎年のように新しい考え方への対応に振り回されて、金融機関等の監査を実施していた会計監査人としては息つく暇のない時間帯を過ごした懐かしい思い出でもある。

当時は制度が変わるたびに、その本質も理解できないままに、ただひたすら会計制度改正に必死で追いついていただけの感じがする。取得原価主義から時価主義会計への頭の切り替え、何で不良債権処理を二年以内でやらなきゃいけないの?

我が国会計基準の国際基準への適用は理解できるものの、会計を政治的に利用する動向には面食らった。

銀行等の保有有価証券に対する原価法適用の容認。ちょっと!時代に逆行する事やるの? 時価が下りすぎたから取得原価のままでいいよ、ということ?

金融機関の自己資本比率改善と貸し渋り抑制を狙った土地再評価法の期間限定適用。

この二つの施策はいずれも会計を政治的に利用したものに他ならない。主として金融機関を助けるための施策であるといっても過言ではない。

まあ、監査人としては助かった部分もあったものの、さて税務業務の方はどうだったのだろう。

税務・コンサル業務も面白くてしょうがなかった。中堅企業の社長とのM&Aや企業防衛対策、相続対策等々、深刻な相談や、やる気満々の相談への対応も頭から離れない。

そして強烈な思い出は、仲間達と徹夜で朝まで議論した、港区の包括外部監査人の仕事。

清掃問題、教育委員会問題、情報関連問題を取り上げ、市民オンブズマンからも高い評価を受け、やりがいのある仕事でした。

個人的には、70歳代は日本百名城と続日本百名城の城巡りで、43都道府県を妻と共に、二周出来たこと。歴史の点と点が、少しずつ線になり、面になりつつある事。城巡りといっても山城ばかりで、ハイキングあるいはトレッキングで階段の上り下りが多く、足腰がしっかりしていないととても完遂できなかったので、我々夫婦の健康に感謝してます。

スキーも50年続け、4年連続の海外スキーで70歳で終了。まあ悔いのない生活を送ってきた気もするものの、80才以降の老年者年長組の今後の生き方を模索しています。

そんな気持ちを整理する意味で、80才にして下記の書籍を出版しました。8月31日アマゾンより発売です。

書籍のテーマ

「人生百年 二人で築く老後の戦略」お金・年金・相続・事業承継・ライフプラン

アマゾン URL ⇒ https://x.gd/PtJc6

以下は、東京会表彰式での挨拶

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公認会計士協会東京会 業務50年代表者挨拶 令和7年6月30日

【イントロ】

ただいま紹介いただきました渡辺俊之と申します 本日はこのような記念すべき場で、業務50年の会員、丁度東京会には50人いるそうですが、代表してお話しさせていただくこと、大変光栄に思っております。

私が当時の公認会計士第二次試験を受けたのは、ちょうど監査法人制度が始まって3年目でした。合格率はわずか5.3%。いまなお破られていません。

その後、有楽町駅前の監査法人で実務を重ね、30歳で独立。最初は税務中心に仕事を進めていて、監査業務は補助者として細々と続ける程度。まさか自分が監査の責任者になるなんて、当時は想像もしていませんでした。

【独立後 税務から監査へ そして本部役員へ】

東京会では、税務委員会や公益法人委員会の委員長も務めていた関係からかわかりませんが、

50歳になったころ、仲間に背中を押される形で、協会の本部理事選挙に出馬せざるを得なくなりました。 そして不思議なもので、そうした活動を通じて「責任ある立場での監査にも挑戦してみよう」という気持ちが芽生え、気がつけば、金融機関や大学、公益法人、包括外部監査などの監査責任者として、いまでも数は減らしましたが、いくつかの監査を現役で仕事をしています。

【協会役職退任後の60歳代以降】

60歳以降は、また現場に戻りまして実務に力を入れてきました。そして現在でも税理士法人の方は、片足を突っ込んでいる程度でほぼ引退していますが、相変わらず私でなければというクライアントについてはコンサル業務を中心に行っており、監査業務は、まだ数社やらざるを得ない状態でして、いつまでやるのか思案中です。

【私の持論と出版】

まあ私の持論ですが、60歳代は老年者年少組、70歳代は老年者年中組、80歳代でようやく老年者年長組といっています。

 

従ってやっと年長さんになれたのですから、まだまだ年少さんにお教えすることはたくさんあると思っています。

そんな思いから、近々書籍を出版します。「人生百年 二人で築く老後の戦略―お金・相続・年金・事業承継・ライフプラン― というタイトルです。アマゾンからお申込みいただき私のお小遣いの一助にしていただけると嬉しいです。(2025年8月31日以降発売予定)

【生成AIとわが業界】

後進の育成はほぼ終わってはいるものの、健康維持のためには現役を続けた方がいいのかな、なんては内心思っています。

さて、最近では「生成 AIの時代が来て、会計士の仕事はなくなるのでは」といった声も聞かれます。確かに、計算技術的な分野では、AIの力は目を見張るものがあります。記帳や申告といった“定型業務”の多くは、これからますます自動化されていくでしょう。

でも私達のコンサルティングという仕事は決して数値化できない人の心を相手にする職業です、人とのコミュニケーションスキルそして信頼関係が必要とされる職業でもあります。

若いみなさんには、こう伝えたい。 「AIがあるからといって、自分の価値が下がるわけではない。むしろ、人間にしかできない領域を伸ばしていくことで、自分の価値はこれからもっと高まっていく」と。

【CPA資格は出発点 あらゆる分野での活躍―】

公認会計士という資格は、あくまで出発点。企業でも、地域でも、国の中枢でも、若い皆さん方の力を必要としている人が必ずいます。どうか、資格に縛られず、でも資格を誇りに思って、自分の人生を切り拓いてください。

私自身もそうありたいと思いながら、今日まで歩んできました。 そしてこれからも、若い皆さんと一緒に、社会に信頼される会計士であり続けたいと思っております。

最後になりますが、長年にわたり支えてくださった皆さまに、そして本日この場を設けてくださった東京会の皆さまに、心より御礼申し上げます。

本日は、ありがとうございました。