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竹中平蔵氏 講演(その5)

バリューオブジャパン、そして日本の存在感を示すチャンス
―子供のサッカーをしている場合ではない!―

今申し上げた事を積み重ねていけば、私は東北のこの問題のきっかけに日本が世界の中で、やはり存在感を示して、日本はさらに元気になっていく。非常に重要なきっかけになるのではないかと思います。
先ほど、日本は今複合連鎖危機に直面していると申し上げましたけれども、これは別な言い方をすれば、日本の価値、バリューオブジャパンが問われていると言う事かもしれません。
もう、原子力は危ない。日本は危ない。そうなって来ると日本に進出してた外資がどんどん出ていく。現実に特にヨーロッパ等々の企業がどんどん日本から今、出ていっているのもあるし、ヨーロッパの大使館は問題が起きた時に館員を東京から大阪に移したというのは、これはもう間違いない事実でありますし、バリューオブジャパン、バリューオブトウキョウ、バリューオブイーストジャパンなんどが問われている。
しかし、今申し上げたような形で新しい農業を作り、新しい町を作り、新しい自治体を作れば、バリューオブジャパンを逆に高めるチャンスである。私はバリューオブジャパンを大いに高めるチャンスが来ているという風に思います。それをぜひ、やってもらいたいわけですが、現実の政治体制はどうになっているか。

残念ですけれども、私は今のそういう関係を称して、子供のサッカーと言う風に言いました。子供のサッカー言葉は結構、流行語になって幸か不幸か、流行語になっているわけですけれども、子供のサッカーはわかりますよね。ボールがある所に子供がわぁーっと集まって、子供がサッカーをする。それは何も決まらない。わぁわぁやっているだけなんです。
ちょっと高い所の視点からこのコートの全体を見れば、ここに隙がある。ここに人がいる、だからここにボールを出せばいいと言う、司令塔機機能を果たす事を出来るのに、司令塔機能を誰も果たさない。皆がそのボールの所にわぁーって行って、わぁーってやっている。皆さん、この震災の後、内閣参与がものすごく増えたというのはご存じでしょうか。
今10何人いるんですか。参与が。そのうちに不満を持って辞めていった人もいますから、実際今、何人いるかよくわからないくらい、参与がいます。
そして今度出されている法律で、なんと大臣を3人増やすというわけです。大臣を増やす。私は今不足しているのは、参与の数や補佐官の数や大臣の数が不足しているのではないと思います。 リ-ダ-シップが不足しているのです。

大臣の数を増やしても、リーダーシップが出るわけではありません。非常に強い中央の本部を作って、そしてそこに総理が陣取って、総理官邸に20幾つも委員会もあるなどとは、異常です。20幾つも委員会があるのは、今も新聞も知られていますけれども、それの裏返しとして、面白い現象があるんです。今皆さん、役人に会って下さい。霞ヶ関の。物すごい兼務が多いんです。これとこれとこれとこれの委員会の兼務をやたら多くて、要するに、どこで何をやっていいかわからない。1つの話を総理官邸にもって行っても、この委員会にかけろ、あの委員会にかけろという事で、要するに中央のガバナンスが効いていない。
先ほどから、震災の防災の対策で全くの現場の人たちが非常によくやっていると言う事と、中央の管理機能は非常に弱い。本来の持っている、強さと弱さが見事に出ていると言う事ではないかと思います。
しかし、それは、やっぱり政党の中枢の人に頑張って頂くしかありません。衛藤先生はその立場で、じりじりしながら、またご自分の立場で頑張っておられると思うんですけれども、これはやはり、私も政党の中で仕事をした関係で、政府とは1種の軍隊の組織になっていますので、トップの役割というのは、本当に重要です。

私は、だから小泉内閣の時に、福田内閣の時、安部内閣の時に経済財政諮問会議というのがあって、経済と財政の分野ではあったけれども、限られた分野ではあったけれども、司令塔の機能を果たした。民主党政権はそれに対して、国家戦略局と言うもっと強い機能を作るという事に言ってましたから、それはそれで大いに結構だと思っていた。それがなかなか出来ない。
だけではなくて、皆さん、今回の法律で復興基本法と内閣法の1部改正と大臣の数を増やすという事を今、法案に出していますけれども、それと引き換えに政治主導の為に、国家戦略局を作ると言う法案を民主党は取り下げたんです。つまり、司令塔を作らないんです。これまた、座標軸から外れた、摩訶不思議な意思決定と言わざるおえないと思います。
ちょっとちゃかして、言ったのは、節電担当大臣を作ったわけです。蓮舫さん。びっくりしました。辻元清美さん、NPO担当補佐官を作ったわけです。
そんなに細かくいろいろ作るんだったら、タービン建屋担当大臣を作ったらどうだろうと。そのくらい、何をやっているかわからない。

実は最後にぜひ、申し上げておかなれればいけないのは、これから、やはり、経済がどうなっていくかに関しては、復興需要は出てくる事は間違いありません。阪神淡路大震災の時は、先ほど言いましたように10兆円くらいの資本がなくなって、それが3年間にわたって出て行きました。この3年間にわたって出て行った事はGTPを0.何%、1%近く押し上げた事は事実でありますけれども、今度の復興需要が出てくるでしょう。しかし、復興需要が出てくる為には、いくつか条件があって、まず、補正予算をちゃんと作るという事です。
ここまで、第2次補正が遅れてるという事は、大変残念なんですけれども、これを更に遅らせてはいけない。これが第1の条件。それと復興需要が出てくる為には、実は電力の供給が制約になってはいけないという事です。残念ですけれども、この可能性はあると思います。

日本経済研究センターが首都圏の電力が10%もし不足したならば、何が起こるかという事を経常的に計測しました。
それによりますと夏場のGTPが最大で4%と下がる。そして、通年でも2%。最大でですけれども2%、電力不足で下がる可能性がある。そして、これは上手くやらなければ、下手をすると、この電力不足は3年間続く可能性がある。まさにバリューオブジャパンの危機になる。そのための対応策として、やはりやらなければいけない事がある。これはやはり原子力をどのうように活用、ある程度するのか。原子力の増設というのは常識的に考えてこれはもう諦めざるを得ないと私も思っていますけれども、しかし、原子力を全部止めてしまうというかという事になると、日本経済に対する打撃は計り知れないものになるし、そこはやはり、政治のリーダーが上手く国民と対話をしながら、解決していかなければいけないと思います。
そして、民間の努力も依存しますけれども、工場や事務所の開設時間の分散化。要するに電力不足と言っていますけれども、これまたおかしいんですけれども、 早朝や深夜のエレベーターを止める必要はないんです。別にその時間電力は余っているんですから。ピーク時の電力を節約する事を考えればいいわけで、ピーク時以外の自粛と称して、変な節約をする必要はないという事も重要だと思います。 

東電の賠償責任の問題

最後に今後の大きなの問題になってくる問題の提起を1つしておきたいと思います。
それは、東電の賠償責任の問題です。これは先々週、あれよあれよという間に閣議決定されました。
私はすごいと思います。東電の関係者がもしいらっしゃったら、お許し頂きたいのですが、あのスキームは私は全く間違ったスキームであると思います。
つまり、東電の問題というのは、これから賠償責任を負います。賠償額はわかりません。最低4兆円と言われ、最大8兆円と言う風に言われますけれども、もっと出てくるかもしれません。
東電の自己資本は3兆円弱ですから、どう考えても債務超過になるという事が懸念される。債務超過になって、万が一、企業が清算するような事になったら、これは困るわけです。私達は電力を受けられない。さらには、賠償を受けるはずの人が受けられない。だから、何とかしなければいけない。これは最初に出てくるのは国の責任か東電の責任か。

これはもちろん、形式的にははっきりさせなければいけませんですけれども、皆さん、安心して下さい。
国民からみれば、どちらも同じです。東電の責任である事ならば、電力料金を皆さんが払って、皆さんが負担する。国の責任であるという事ならば、税金という形で皆さんが負担する。どっちにしても、皆さんが負担します。皆さん以外に負担する人はおりません。だから、重要なのはどっちかという事は、法律上ちゃんと引きびきはしてほしいけれども、皆さんの負担の総額を減らしてもらいたいと言う事です。
皆さんの賠償はちゃんとします。皆さんの総額を減らするには、どうしたらいいか。それは、責任者にまず、負担してもらえという事です。

責任者とは誰なのか。株主です。まず、経営者が責任をとって、経営者は入れ替え。そして、株主が3.何兆円資本を吐き出す。申し訳ないけれどもそうする。そして債権者にも、しかるべき責任をもってもらう。これは当たり前じゃあないですか。
これは、実質、債務超過になってやっていけなくなる、法的な私企業の救済ですから、足利銀行と同じだと思います。足利銀行が一時国有化しました。一時国有化して国が管理の元でちゃんとした合理化を行って、そして、別な主体にふるわけです。足利銀行はなくなりましたけれども、銀行はなくなりません。
つまり、そういう事を申し訳ないけれども、東京電力にやってもらう。これが実はつまり、座標軸です。これ、現実には政策当局が大変だと思う。なぜならば、株主に責任を取ってもらえと言うのは、これは間違いなく本質論なんですけれども、東電の株式の36%は銀行がもっていますから。
そうすると銀行のバランスシートが痛むのではないかと。債権者も銀行ですから、銀行が痛むのではないか。それに蓋をしたい為に、とにかく責任を一切加えないような形で、閣議決定された。しかし、政治家の直感としてこれはまずいよなぁと思うわけです。
だから、枝野さんがじゃあ金融機関にも債権放棄してしてもらわなればいけないのではないかとちょろちょろと言いだしたわけです。

だけど、枝野さん、間違っています。金融機関の債権放棄の前に株主の責任でしょ。一般株、優先株、一般債権、こんなの、弁護士である枝野さんなら、わかるはずです。そういう本来の議論すべき、当たり前の議論をすっ飛ばして、覆い隠してたままで、訳のわからない閣議決定して、そして、これ国会が法律にして、こんなの国会にかけたら、大変な事になります。これは国民に負担を求める以上、まず関係者が負担をしろ、責任を負えというのは当たり前の話ですので、それを含めてとにかく、今の与党は国会を閉じて、蓋を閉して、政権を延命をさせたいという思いは、見え見えになるわけでありますけれども、結局その負担は全部国民に来ます。
カーライフが言いました。フランスの思想家カーライフが言いました。経験こそが最良の境地である。1回民主党がやってみろ。経験こそは最良の境地であると、しかし、それは高くつく。これがカーライフの言葉でした。出来るだけ高くつかないように、衛藤先生に頑張って頂きたいと思います。
有難うございました。